オノ シゲキ   Shigeki Ono
  小野 成紀
   所属   川崎医科大学  医学部 臨床医学 脳神経外科学2
   職種   教授
言語種別 日本語
発表タイトル NPHにてシャント術施行後、シャントfreeとなり得た症例における髄液循環の考察
会議名 第14回日本正常圧水頭症学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎小野成紀, 亀田雅博, 伊達勲
発表年月日 2013/02/09
開催地
(都市, 国名)
東京
概要 水頭症治療として脳室腹腔シャント術は確立された手技であり治療法のゴールドスタンダードとな ってすでに久しい。しかし、シャントにはslit ventricle syndrome やシャント閉塞、オーバードレナージ、シャント感染 、成長に伴うシャントチューブ延長の必要性など多くの問題が存在し、場合によっては数度のシャント再建術が必要となることもしばしば経験する。今回我々は、水頭症の診断のもと以前行われたシャントを、様々な理由で抜去せざるを得なくなり、その後シャンfreeとなった症例を5例経験した。これらにの症例がシャント freeとなり得た要因につき髄液循環に着目し報告する。症例は2007年から2012年まで約5年間の脳室腹腔シャント挿入症例で、くも膜下出血(SAH)後の NPH 症例4例、原因不明の約20年前のシャント症例が1例であった。SAH後のNPH症例では、4例とも食道癌を併発、食道癌根治術の際チューブを損傷したり、術野に露出してしまう恐れがあるとの理由でシャントチューブが一旦抜去され、その後様子を見てドレナージや脳室心 房シャントなどへの切り替えを考慮するという治療方針となった。シャント抜去後4例ともに脳室は全例若干 拡大したが症状を来すこと無く経過した。20年前に行われていたシャント症例は、シャント閉塞による急性水頭症を来し来院、ドレナージを挿入、その後のMRI検査で中脳水道狭窄症が示唆され、第3脳室底開窓術(ETV)が施行され軽快した。
SAH後NPH症例では、シャント後髄液循環が詳細に調べられることは殆ど無く、またシャント挿入によりその循環動態は複雑化しているためシャント抜去があえて試みられる症例は少ない。今回の経験から症例によって は髄液循環を検討することでシャントfreeとなり得る症例が予想外に存在することが明らかとなった。また、ETV 施行可能以前の症例ではMRIでflow studyやthin sliceによる詳細な検討を行うことでより確実にシャント freeとなり得ることが示唆された。