ヤマウチ アキラ   Akira Yamauchi
  山内 明
   所属   川崎医科大学  医学部 基礎医学 生化学
   職種   教授
言語種別 日本語
発表タイトル ラット疲労実験モデルを用いた香料化合物Xによる抗疲労効果の実験的検証
会議名 第95回 日本産業衛生学会
主催者 日本産業衛生学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者西村泰光, 野見山謙太, 五十嵐美香, 栗林太, 山内明
発表年月日 2022/05/27
開催地
(都市, 国名)
高知
概要 【背景】我が国では就労人口の約60%が疲労を感じ、約半数が慢性的な疲労に悩んでおり、“産業疲労”は解決すべき社会問題の一つである。香料は食品、化粧品、ハウスホールド製品など広く利用されており、一部の香料は人の健康増進に影響を与えることが知られるが、実験的検証により香料の抗疲労効果が明示された例は少ない。日本疲労学会分科会臨床評価ガイドラインでは疲労評価指標として、自律神経、酸化ストレス、サイトカイン、作業負荷などを示している。そこで、ラットの水浸負荷を疲労実験モデルとして、各種指標の変動を測定し、香料化合物Xの抗疲労効果の実験的検証を試みた。
【結果】体重は水浸負荷により著明に低下したが、香料X曝露により有意に低下は抑制された。負荷はd-ROMs値(酸化ストレス指標)を有意に増加したが、X曝露により抑制された。アドレナリン、ノルアドレナリン濃度は群間差を示さなかったが、ドーパミン濃度は香料X曝露により有意に抑制された。負荷により炎症性サイトカインIL-1β, IL-10濃度は増加傾向を示し、他方でIL-2, IL-17A濃度は有意に減少し、IL-5も減少傾向を示したが、X曝露によりそれらは抑制された。負荷により白血球中IL-1β,TNF-α mRNA量は増加傾向を示したが、いずれもX曝露により抑制された。ドーパミン, d-ROM, BAPと血清中IL-1β, IL-10, IL-2, IL-5, IL-17A、および白血球中 IL-1β, TNF-α mRNAの10因子による主成分分析は3つの成分を抽出し、第1成分(PC1, 寄与率47.865%)に対してドーパミン, d-ROM, BAP, 白血球中IL-1β, TNF-α mRNA量, 血清中IL-1β, IL-10濃度は正に寄与し、IL-2, IL-5, IL-17Aは負の寄与を示した。PC1スコアは水浸負荷で有意に増加したが、香料X曝露により有意に抑制され、抑制効果はlinaloolよりも大きく、スコアは負荷無しと同程度まで減少した。
【結論】水浸負荷群のラットは体重減少、酸化ストレス指標の増加、炎症指標の増加、免疫機能指標の低下を呈し、疲労状態で有ることを示す。香料Xの曝露により、これらの疲労状態は改善され、またドーパミン濃度も減少した。更には主成分分析により抽出された統合スコアPC1は疲労・炎症・免疫機能の因子を内包し、疲労によるスコアの上昇は香料X曝露により明瞭に抑制された。以上の知見は、香料Xが抗疲労効果および免疫機能改善効果を有することを示す。