タケウチ マサキ   Takeuchi Masaki
  竹内 雅貴
   所属   川崎医療福祉大学  医療技術学部 臨床検査学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル 脊椎動物における初期発生の多様性 ―原始的条鰭類ポリプテルスの知見から―
会議名 第16回小型魚類研究会
学会区分 研究会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎竹内雅貴, 高橋麻衣子, 相沢慎一
発表年月日 2010/09/18
開催地
(都市, 国名)
さいたま市
概要 脊椎動物の初期発生過程は、ボディプランを確立する重要な発生段階であるにも拘らず、全割/盤割の卵割様式や胚体外組織の有無、原腸形成時の組織配置など、形態的に多様である。より祖先的な後口動物と比較し、現存脊椎動物は多量の卵黄を獲得した分類群で、卵黄の持ち方を変化させた結果として多様化したと考えられる。この多様性から、初期発生過程は卵黄量の増減によりフレキシブルに変化すると思われがちであるが、その様式は動物綱レベルではよく保存されており、脊椎動物全体という比較的マクロな視点で系統的に解釈する事が可能であると考えている。これまで、両生類胚は全割により生じたすべての細胞が初期三胚葉の一部へ分化する(胚体外組織が無い)点で原索動物胚と共通であるため、この多様性の根幹を成す初期発生様式は両生類様であると広く考えられてきた。また従って、卵黄細胞を含めた胚体外組織の獲得は、盤割化の過程とリンクし、脊椎動物系統で平行して何度も起きたと認識されていた。しかしながら、これらの考えは系統的に検証されているとは言えず、特に、“全割発生する両生類以外の脊椎動物”についての分子発生学的知見が欠けていた。
 本発表では、条鰭類系統の根元で分岐した魚:ポリプテルスの胚発生を解析した結果をもとに、新たな視点を提案したい。ポリプテルスの初期発生は両生類と非常によく似た様相を示すにも拘らず、その植物極側細胞集団(VCM)は胚葉へ分化せず、中胚葉だけでなく内胚葉も帯域でのみ分化する。非内胚葉性VCMは、同じく全割発生するヤツメウナギ胚にも存在する。従って、脊椎動物における卵割様式と胚葉形成の多様化過程について、以下のように推論する;1)脊椎動物の共通祖先は全割発生で、卵黄量の増加に伴いポリプテルス・ヤツメウナギVCM様の胚体外領域を獲得した。2)全割から盤割への移行は、その胚体外領域の一部が進化的に融合し、卵黄細胞を形成する事で起きた。さらに、ポリプテルスVCMが細胞非自律的な中内胚葉誘導活性を持つ事から、羊膜類での胚盤葉下層や臓側内胚葉などや真骨魚の卵黄多核層は、ポリプテルスVCM様の祖先的組織から派生したと考えられる。一方、両生類の胚葉形成は、植物極側で母性に発現するT-box転写因子VegTに制御される点で特徴的である。ーーー