タケウチ マサキ   Takeuchi Masaki
  竹内 雅貴
   所属   川崎医療福祉大学  医療技術学部 臨床検査学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル 脊椎動物における初期発生システムの進化 ―原始的条鰭類ポリプテルスの胚発生から考察する―
会議名 第5回日本ツメガエル研究集会
学会区分 研究会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎竹内雅貴
発表年月日 2011/10/06
開催地
(都市, 国名)
熱海
概要 脊椎動物の初期発生過程は、ボディプランを確立する重要な発生段階であるにも拘らず、全割/盤割の卵割様式や胚体外組織の有無、原腸形成時の組織配置など形態的に多様である。この多様性の根幹を成す初期発生様式は両生類様であると広く考えられてきた。なぜなら、基本的に両生類胚は原索動物胚と同様で、胚体外組織を持たず、全割により生じたすべての割球から三胚葉を形成するためである。この考えに従えば、胚体外組織(卵黄細胞も含む)は、盤割化の過程に付随し何度か平行して獲得された事となる。また一方で、両生類の胚葉形成や体軸形成の分子機構においては、母性に供給されるT-box転写因子VegTの機能や、母性Wntシグナルのターゲットであるhomeobox転写因子siamoisの機能など、その重要性にも拘らず他の脊椎動物でみられないシステムが存在する。これらの制御機構は、そのアウトプットとしての発生様式と共に系統的に検証すべきであり、これまで特に“全割発生する両生類以外の脊椎動物”についての分子発生学的知見が欠けていた。
本発表ではツメガエルとの比較を交えて、条鰭類系統初期に分岐した硬骨魚:ポリプテルスの胚発生を紹介したい。ポリプテルス胚は全割で発生し、両生類と非常によく似た様相を示す。この共通点は、四肢動物を含む硬骨動物すべての共通祖先における発生の特徴であると考えられる。しかしながら、他の多くの脊椎動物同様に、ポリプテルス胚でVegT相同遺伝子は母性発現しない。さらに、ポリプテルスでは中胚葉だけでなく内胚葉も帯域でのみ分化し、植物極側細胞集団(VCM)は内胚葉へ分化しない。この非内胚葉性VCMは細胞非自律的な中内胚葉誘導活性を持つ。これらの結果は、現生両生類の系統において、母性VegTの発現と機能が特異的に獲得され、それに伴ってVCMが内胚葉へ変化した事を示唆する。以上に加えて、ツメガエル胚への過剰発現で完全二次軸を誘導できる因子として、ポリプテルスのsiamois関連遺伝子を単離し、機能解析を行っている。これらの解析結果をもとに、脊椎動物の初期発生とその分子機構の多様性を系統的に検証し、新たな視点を提案したい。