オバマ ナオヤ   Naoya Obama
  小浜 尚也
   所属   川崎医療福祉大学  リハビリテーション学部 言語聴覚療法学科
   職種   講師
言語種別 日本語
発表タイトル 交叉性失語症における発語失行の音響学的解析
会議名 第26回日本言語聴覚学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者齋藤 千加, 坂本 芙月, 佐藤 良樹, 兒玉 成博, 小浜 尚也
発表年月日 2025/06
国名 日本
開催地
(都市, 国名)
山形
開催期間 2025/06/27~2025/06/28
概要 【はじめに】
プロソディー障害の特徴は損傷半球によって異なる.本研究では,交叉性失語症者の発話特性を解析し,特に発語失行の音響学的側面に焦点を当てて検討した.
【症例】
70代男性,右利き(エディンバラ利き手検査+100).X日,左上肢の脱力感を認め,声が出なくなり救急搬送.同日MRIにて右中大脳動脈に脳梗塞 (右中心前回~傍側脳室)を認め,発症4時間後にt-PAが投与された.
【神経学的所見 (X+7-8日)】
左上下肢麻痺 (BRS: Ⅲ-Ⅲ-Ⅴ),左舌下神経麻痺,左顔面神経麻痺.SLTA-ST: 口腔顔面の随意運動 (模倣)において動作の拙劣さあり.口部顔面失行の疑い.
【神経心理学的所見 (X+4-11日)】
RCPM: 23/36点.TMT-J-A: 97秒,B: 中止.線分二等分試験: 9/9点.SPTA: パントマイム,物品使用障害なし.SLTA: 発話は一部に意味性錯語があるが,多くは発語失行や音韻性錯語による誤りで重度障害.単語理解は比較的良好だが,短文レベルで一部誤り.書字は漢字>仮名で保たれ,音韻性錯書を認めた.
【発話特性の分析】
Apraxia of Speech Rating Scale-3.5ではPhoneticが12/16,Prosodicが6/16と判定され,本例は構音的誤りが優位であった.「北風と太陽」の音読を音響分析した結果,健常成人より発話時間が延長していたが,イントネーションに顕著な差はなかった.評価は2名の言語聴覚士が実施した.
【考察】
本例は言語機能が右半球に側性化した交叉性失語例である.発語失行の音響学的分析では構音的誤りが中心であり,プロソディー的特徴は比較的保たれていた.この所見は,左半球が内発的韻律 (音節の開始や遷移を担う微細構造)を処理する特化性を示す報告と一致し,内発的韻律障害が発語失行の中核である可能性を支持する.