モリヤ タクヤ   Takuya Moriya
  森谷 卓也
   所属   川崎医科大学  医学部
   職種   学長付特任教授
論文種別 原著
言語種別 日本語
査読の有無 査読あり
表題 エストロゲン枯渇下及びフルベストラント曝露下の長期培養による内分泌療法耐性乳癌細胞の作製と特徴分析
掲載誌名 正式名:乳癌基礎研究
ISSNコード:13432028
掲載区分国内
出版社 乳癌基礎研究会
巻・号・頁 28,47-55頁
著者・共著者 紅林 淳一, 岸野 瑛美, 緒方 良平, 齋藤 亙, 小池 良和, 太田 裕介, 鹿股 直樹, 森谷 卓也
発行年月 2020/08
概要 背景と目的:乳癌内分泌療法耐性の発生メカニズムに関しては、多くの研究仮説が報告されているが、いまだ不明な点が多い。我々は、アロマターゼ阻害薬やLH-RHアゴニストの治療に相当するエストロゲン枯渇(estrogen-deprivation、ED)、抗エストロゲン薬の治療に相当するフルベストラント(fulvestrant、FUL)曝露下において耐性を獲得した乳癌細胞を作製し、親株との遺伝子発現の差異を検討し、耐性獲得に関連する遺伝子を検索した。材料と方法:エストロゲン(estrogen、E)依存性ヒト乳癌細胞株MCF-7を用いた。ED培地(フェノールレッド非添加RPMI-1640 + 5% dextran-caoted charcoal処理ウシ胎児血清[FBS])または100nM FUL添加D-MEM + 5%FBSを用いMCF-7細胞を6ヵ月間継代培養し、ED耐性細胞(long-term ED細胞、LTED細胞)及びFUL耐性細胞を作製した。LTED細胞、FUL耐性細胞、オリジナルのMCF-7細胞(親株)からtotal RNAを抽出し、網羅的mRNA発現アレイを行った。その後、パスウェイ解析、キーワード遺伝子検索を行い、親株に比べ両耐性細胞で発現が有意に変化している遺伝子を抽出した。さらに、両耐性細胞の各種遺伝子の定量reverse transcription(RT)-polymerase reaction(PCR)法によるmRNA発現及びエストロゲンに対する増殖反応性を検討した。結果:パスウェイ解析では、Eシグナル経路がLTED細胞で促進されており、一方、FUL耐性細胞で抑制されていた。実際、Eの細胞増殖促進効果は親株に比べLTEDではより低濃度でみられ(hypersensitivity)、FUL耐性細胞ではみられなかった。キーワード遺伝子検索では、Eシグナル関連遺伝子(とくにESR1)がLTEDで増加、FUL耐性で低下していた。癌幹細胞関連因子では、両耐性細胞においてCXCR4の発現が顕著に増加していた。EGFR関連因子では、両耐性細胞においてHER4発現が最も増加していた。また、両耐性細胞においてHER2の発現の増加もみられた。これらの遺伝子発現の変化は、定量RT-PCR法により確認された。考察:LTED細胞は、Eに対しhypersensitivityを獲得しており、Eシグナル経路(とくにESR1発現)の促進と合致している。一方、FUL耐性細胞では逆の変化がみられた。内分泌療法耐性細胞におけるHER2発現の亢進に関してはすでに報告があるが、CXCR4やHER4の発現亢進に関する報告は見当たらず、新たな耐性克服の標的として注目に値する。(著者抄録)
文献番号 2021043899