ニシワキ アイ   Nishiwaki Ai
  西脇 藍
   所属   川崎医療福祉大学  医療福祉学部 医療福祉学科
   職種   講師
論文種別 総説
言語種別 日本語
査読の有無 査読あり
表題 池田家文庫『醫師家譜』による岡山藩の医家の系譜-今後の岡山医学史の課題の提示も併せて-
掲載誌名 正式名:川崎医療福祉学会誌
掲載区分国内
巻・号・頁 28(1),15-26頁
著者・共著者 西脇 藍
発行年月 2018/06
概要 本稿では,昨年11月に川崎医療福祉学会において筆者がおこなった『醫師家譜』(岡山大学附属図書館「池田家文庫」所収)についての発表以降に進めた調査研究の報告とともに,その過程で見えてきた岡山藩の医学史に対する課題の提示を行なった.『醫師家譜』によると,当時の藩医は「醫師」以外に「外科」・「針立」などの専門科に区分されていた.また彼らの活動範囲は,藩主の診察や治療だけに留まらず,参勤交代に随行,周辺地域への往診,そして幕府や藩の普請場にて医療活動など,岡山藩内だけに限られていなかった.『醫師家譜』の作成された寛文9年(1669)は岡山藩の藩政が確立した頃でもあり,ここに記された医師たちは歴代の岡山藩藩医の家の初代と位置付けられよう.この諸医家が岡山藩の医を支え続けたといってよい.そしてこの医の系譜は途切れることなく,今日の岡山県の医療水準の高さと充実した医療環境へと繋がっていった.本論考により岡山の「医を継承する力」は,江戸時代から培われてきたものであったと確信でき,岡山の近世における医学史を研究する意義の裏付けを得ることができたと思っている.また江戸時代の各時期の状況に応じて発令された病者や生活困窮者などのための救済の法令および組織は,医療と福祉の二つの機能を包含し存在していたと推察され,大いに関心が引かれる.今後は岡山藩の医療の実態や医者についてはもちろん,当時の法令や互助組織なども合わせて岡山藩の医学史を究明し,江戸時代に創出された「医療福祉」のかたちも掘り起こしてゆけたらと考えている.